メインウェブサイトからの移植 その2

移植記事のその2です。

2017-01-29 民泊の新法制定?

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

前回は民泊(簡易宿所)の許可はハードルが高い!と、これから民泊を始めようという方には面白くもなんともない記事を書きましたが、今日は新しい政府の動きをご紹介します。(もう半年以上前の話ですけどね・・・)

厚生労働省と観光庁でつくる専門家会議が昨年6月、一般の民家に観光客を有料で泊める「民泊」を本格的に解禁するため、新法の制定を求める報告書をまとめました。まだ法律は施行されていませんが、内容はこの報告書である程度までは予想できそうです。

厚生労働省の報告書の全文はこちらで見てください
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin.html?tid=312986

以下、気になるところを抜粋していきます。枠で囲まれているところは、「報告書」からの引用です。

制度の対象とする民泊の意義

住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。「一定の要件」を超えて実施されるものは、新たな制度枠組みの対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要である。

現在の旅館業法とは別に新しく法律が制定されるということのようです。「一定の要件」というのがどういうものかが気になりますが、旅館業許可よりは要件が緩くないと使いようがないです。

「家主居住型」と「家主不在型」

「家主居住型」と「家主不在型」に区別した上で、住宅提供者管理者仲介事業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が、住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築する。

新しく制定される民泊新法(←私が勝手に言ってる言葉です)では、家主居住型と家主不在型の2タイプが考えられているようです。下線のところですが、把握できる仕組みって何でしょう?現在、違法民泊を取り締まれていないことを今後はどうにかしようという意味だと思います。

家主居住型(ホームステイ)に対する規制

  • 「家主居住型(ホームステイ)」とは、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいう(この場合、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能)。
  • 住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するに当たり行政庁への届出を行うこととする(家主不在型も同様)。
  • 住宅提供者には、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は、旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を求め、安全面・衛生面を確保し、匿名性を排除する。また、無登録の仲介事業者の利用の禁止を求めるべきである(家主不在型も同様)。
  • また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(「一定の要件」に違反した民泊や、家主居住型と偽って家主不在型の民泊を提供するもの等)を提供した場合の業務の停止命令等の処分、無届で民泊を実施したり、上記の義務に違反するなどの法令違反に対する罰則等を設けることを検討すべきである(家主不在型も同様)。
  • 住宅提供者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。※ 住宅提供者が仲介事業者を利用せず、自ら利用者を募集する場合についても、本報告書の制度設計のあり方に沿って取り扱うべきである。
  • 宿泊拒否制限規定は設けない。

家主不在型に対する規制について(管理者規制)

  • 「家主不在型」の民泊(出張やバカンスによる住宅提供者の不在期間中の住宅の貸出しは家主不在型と位置付け)については、家主居住型に比べ、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確である。
  • そこで、「家主不在型」の民泊については、住宅提供者が管理者に管理を委託することを必要とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保する。
  • 管理者は行政庁への登録を行うこととする(住宅提供者自らが管理者としての登録を受ければ、自宅で、家主不在型の民泊を提供することも可能)。
  • 管理者による住宅提供者の届出手続の代行を可能とすることを検討すべきである。
  • 管理者は、住宅提供者からの委託を受けて、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示(国内連絡先を含む。)、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を行う。
  • また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、上記業務を怠った場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。
  • 管理者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。

家主が住んでいる物件に宿泊させるものと、家主がいない物件に宿泊させるものがあるとなっていますが、家主不在型の方がが多いでしょうね。
注目すべきは、許可申請ではなく「届出」でいいということです。
許可と届出はどう違うか?
簡単に言えば、「許可」は申請して行政側の審査、判断があり許可されてはじめて営業できるのに対し、「届出」は行政に対して民泊やります!とお知らせして終わり、みたいなイメージです。(簡単にいい過ぎかもしれません・・・)といっても、警察(公安委員会)に対してする許可申請と、届出でそう大差ない手続のものもありますし、人を宿泊させるという業態である以上、大げさではなく命に関わることもあるので、営業開始しますよ!とお知らせして終わりということはないような気がします。また、管理者を置くことができる旨も規定されるようです。

仲介事業者規制について

  • 民泊(家主居住・不在型いずれも含む。)に係る仲介事業者は行政庁への登録を行うこととし、仲介事業者には消費者の取引の安全を図るため、取引条件の説明義務や新たな枠組みに基づく民泊であることをサイト上に表示する義務等を課すべきである。
  • また、行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(無届の家主居住型民泊、登録管理者不在の家主不在型民泊、「一定の要件」に違反した民泊等)のサイトからの削除命令、違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。
  • 仲介事業者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。
  • 外国法人に対する取締りの実効性確保のため、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにすることを検討すべきである。

仲介業者というのは、Airbnb‎のようなもののことです。現在、無許可民泊が登録されていることが問題になっていますが、許可申請または届出をしていない事業者は登録できなくなります。他の業界でも、許可証を見せないと雑誌やウェブに掲載してもらえなかったりするのは普通にありますので、民泊もそうなるのは当然でしょう。

一定の要件について

  • 上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。
  • そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」として扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも配慮しつつ、年間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。なお、その際、諸外国の例も参考としつつ、既存のホテル・旅館との競争条件にも留意する。
  • 「住宅」として扱い得るような「一定の要件」が設定されることを前提に、住居専用地域でも実施可能とすべきである(ただし、地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能)。
  • 「一定の要件」が遵守されているかのチェックのため、住宅提供者又は管理者に報告などを求めるべきである。

報告書には「一定の要件」について、あまり具体的には書かれていませんが、明らかになっているのは、年間提供日数上限(180日以下)と住居専用地域での営業を認めるということです。180日しか営業できないので、通年で営業したいなら相変わらず旅館業許可を受けるしかないです。
住居専用地域での営業ができる点は、条件が付く可能性はありますが、民泊にできる物件が相当増えると思います。

その他

  • 旅館業法に基づく営業許可を受けずに営業を行っている者(以下「無許可営業者」という。)その他旅館業法に違反した者に対する罰則については、罰金額を引き上げる等実効性のあるものに見直すべきである。
  • また、無許可営業者に対する報告徴収や立入調査権限を整備することについても併せて検討すべきである。
  • 旅館業法の許可に当たり、賃貸借契約、管理規約(共同住宅の場合)に反していないことを担保できるような措置について、検討すべきである。

現在の旅館業法の罰則はあまり重くないので、今後見直される可能性が示唆されています。旅館業法の内容自体も改正され、立ち入り権限等が強化されるようです。

旅館業法が作られた当時は、民泊のようなものは想定されていなかったため、民泊と旅館業法はマッチせず、許可を受けるのが非常に難しくなっていますが、新法が成立すればもっと簡単に民泊を始められるようになるかもしれません。まだ法律ができていないので、消防法や建築基準法のことはどうなるのか?という不安はありますが、これは緩和されると考えていいと思います。

法律が制定されたら、またご紹介したいと思います。
ではまた

2017-02-27 住宅宿泊事業法の案の話

どうも!
沖縄の行政書士、酒井です。

いよいよというか、やっとというか、民泊新法の案がネット上に出回っています。法律の名前は「住宅宿泊事業法」なんだそうです。相変わらず「民泊」は俗称のままですね。
3月くらいに国会に提出されるようですが、施行まではまだ少し時間がかかりますね。法律だけじゃなく、政令、省令、条例も準備が整わないと施行できませんので、しばらくはかかると思います。

案の全文をここに貼り付けて紹介してもしんどいだけなのでしませんが、気になる点だけピックアップしておこうと、ざっと案を読んでみました。

気になっていた点1
まず、営業可能な日数ですが、やはり1年間で180日以下になるようです。1年の半分ですが、半年お休みで利益が出るかどうかですね。通年で営業したいならやはり旅館業許可を取る必要があります。

気になっていた点2
旅館業許可申請では非常に厳しい用途地域の制限ですが、住宅宿泊事業法の中で、用途地域による営業は禁止なんて規定はありません。が、法案の18条に「条例による住宅宿泊事業の実施の制限」という規定があり、都道府県ごとに条例で制限を設けることができるようになっています。
常識的に考えて、第一種低層住居専用地域など、いわゆる高級住宅街での制限が設けられるのは当然でしょう。
旅館業でもそうですが、県が条例で法律に上乗せする形で民泊を制限している事例がありますが、住宅宿泊事業法でもこれはありうる話です。
「〇〇県では、面倒だから民泊一律禁止」などといった制限ができるかといったらそうではありません。
18条には、「住宅宿泊事業法に起因する騒音の発生、その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要であると認められる区域があるときは、条例で観光客の宿泊に対する需要への的確な対応に支障を生ずるおそれがないものとして、政令で定める基準の範囲内において、期間を定めて当該区域における住宅宿泊事業の実施を制限することができる」となっています。
政令の内容はまだ私は見ていないです。

気になっていた点3
消防設備、用途変更等ですが、これらも、政令、省令、条例等に委任するかたちですので、詳細は不明です。
旅館業よりは緩いのかな?同等の基準を求められたらあまり使えないと思います。

また「住宅宿泊管理業」(民泊運営事業者)や「住宅宿泊仲介業」(Airbnbなど)についても規定されています。
登録する際の登録免許税が9万円と結構高いなぁ~という印象です。

とりあえずはさわりだけですが、ご紹介してみました。
政令、省令、条例等が出そろってきたら、詳細を書きたいと思います。

ではまた。

2017-03-13 建物がキレイかどうかは旅館業許可の要件ではない話

どうも!
沖縄市の行政書士、酒井です。

先日、保健所に飲食店営業許可の申請書を提出しに行ったのですが、私の隣のカウンターで旅館業の許可について聞いている方がいました。飲食許可の申請手続き中に、隣の話が耳に入ってきたのですが、こんな話をしていました。

相談者「キレイにリフォームしました。簡易宿所の許可取れますか?」
保健所の職員さん「キレイかどうかは問題じゃないですよ。」
相談者「え?クロスも床も張り替えたんですけど・・・」
保健所の職員さん「消防設備は整っていますか?管轄の消防本部で消防法令適合通知をもらってください。床面積は・・・60㎡くらいですね。用途変更は要らないですが、検査済証はありますか?それらを添付して申請してください。」

私が何を言いたいのか?ですが、質問している方の「キレイにリフォームしました!」です。これ、うちの事務所にご相談に来られる方もよくそう仰られます。

もちろん、お客を宿泊させる建物なので、キレイなほうがいいに決まっていますが、見た目の問題より先にクリアすべき要件がたくさんあります。
用途地域、用途変更の建築確認、消防設備・・・
それらの問題がクリアになっていれば、見た目がボロでも許可は取れます。逆に言えば、見た目が立派でもこれらの問題がクリアになっていなければ許可は受けられません。

お金をかけてリフォームしたのに、用途地域が住居専用地域だった・・・とか、リフォームに資金をつぎ込んだら、消防設備設置の費用が足りなくなった・・・とか、用途変更の建築確認申請をしてくれる建築士を探しても誰も依頼を受けてくれない・・・とか。こんなことになったら、旅館業許可は無理です。もうしばらく待って、住宅宿泊事業法に期待してくださいとしか言えません。

旅館業許可を受けるには少なくないお金がかかることが多いです。許可が受けられる見込みを調査して、総額どのくらいかかるのかをしっかり見極めてからリフォームに着手するようにしてくださいね。

ついでにもう一つ。
不動産情報などで、「民泊OK!」という賃貸物件。
不動産情報サイトなどをみると、最近は「民泊にどうですか?」などとコメントがつけられ紹介されている建物を見ます。
これも事前に調査せず安易に契約してしまうのは危険です。上記のように紹介されている物件すべてがそうではないですが、なかにはどうやっても旅館業許可を受けられない建物があったりします。不動産業者さんはウソを言っているのか?というとそういうわけではないです。
民泊OK!というのは、「オーナーさんが民泊に使ってもいいよ」と言っているということだったりします。(オーナーさんがダメと言ってる物件は、許可要件を満たせそうでも民泊には使えません)オーナーはOK、で、許可は借主さんの責任でお願いしますということです。
すぐに民泊営業ができる物件を紹介しているとは限りませんのでご注意ください。

当事務所は許可が受けられるかどうかの調査も承っていますのでご相談ください。

ではまた

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